先日2018年5月4日、「Heineken(ハイネケン)」+「F1」主催のフェスイベントがホーチミンの2区で開催された。
ただこのイベントが、単なる「Heineken(ハイネケン)」と「F1」のスポンサードがついたフェスイベントと思ってしまって見逃してはいけない。
日本では、Ultraなどの海外のフェスがはいってきて、「フェス」が若者リア充の典型例となってきて数年たつが、そこには必ずアルコール会社のスポンサーはお決まりだった。
例えば、2015年のUltra Japanでは「Budweiser(バドワイザー)」や「Sminof(スミノフ)」がスポンサードの1社となり、SNSにシェアできるようの特設のPhoto Boothなどが設けられていた。
「Heineken(ハイネケン)」もフジロックなどでスポンサーしている。
(続き) #ultrajapan2015 の #バドワイザー ブースでは、DJ気分が味わえるフォトブースが登場!皆さん、最高の笑顔でした!(≧▽≦)#budweiser #ultrajapan pic.twitter.com/7IzqSO8pHT
— BudweiserJapan (@budweiserjp) October 2, 2015
上記のように、若者たちが一斉にリア充写真をSNS上に投稿していたので、ブース前で写真を撮ったものが、若い友人がいる人、またはあなたがフェスに行くような年齢ならタイムラインに流れてきたことだろう。
「若者のクールな場にある、◯◯のクールなアルコール」
というイメージを印象づけることができる、楽しい「コト」に寄り添うイマドキらしいブランディング手法だ。
ただ、これらのイベントは「Ultra」(またはそれ以外のイベントの)がフェスを運営している中で、スポンサーとして、いくらかお金を出してブースを設置させてもらっているだけにすぎない。正確にはわからないが小さなブース設置で数百万円程度の費用を支払っているかと思う。
ただ、今回行われたイベントは「Heineken(ハイネケン)」と「F1」が主催するイベントだった。
どんなフェスだったのか
ただフェスを主催しているだけならまだしも、ベトナムの若者にとって驚くコトは2つだろう。
1つが、2017年の世界DJランクベスト10位(稼いでる額)に入る若き大物の
「Martin Garrix(マーティン ガリックス)」を呼んでいたこと。
もう1つが、ベトナムの国民的歌手
「My Tam(ミー・タム)」を呼んでいたこと。
Photo from Zing
これらのことを、わざわざ、「Heineken(ハイネケン)」+「F1」の主催するイベントとして、Ultra並の大きなステージをつくり派手に実施したことだ。
これを日本でやったらまだ納得がいくかもしれないが、
もともと、Ultraのようなフェス自体がまだ入ってきない、そもそもフェスだけではなく、海外アーティストがベトナムでコンサートを開くこと自体がまだほとんどないベトナム市場において、「Martin Garrix(マーティン ガリックス)」が来越して演奏することは、かなりのインパクトだったに違いない。
また、フェスなどにスポンサードして、楽しい「コト」に寄り添うブランディングマーケティングをするだけではなく、「Heineken(ハイネケン)」+「F1」自らが大規模な「コト」をつくりに行ったのが、かなり攻めのマーケティングだったのではないだろうか。
これは、経済成長が進んできているとはいえ、開発途上のベトナムに乗っかることができる「コト」がなかったからもしれないが、それでもかなり大きな広告宣伝費用をつかったことは容易に想像ができる。
ベトナム市場にそれだけ広告費用をかける意味があるのか?
「Martin Garrix(マーティン ガリックス)」のギャラだけで、1000万円以上もかかるはずだが、そもそもベトナム市場に、それだけ広告費用をかける意味はあるのだろうか?
ここで、ベトナムの若年層構成をみてみたい。
まず、ベトナムは人口が9,600万人程度いるといわれ日本とかなり近い数値にあるが、人口構成が全く異なる。
-国民の平均年齢は31歳で(日本は45歳)、1960年代の人口構成の日本に近いといわれている
-もっともアルコールを飲む(飲める)世代のボリュームゾーンはおのずと多くなり、概算で20歳以上は人口の70%を占めるのではないかと思われる。
-かつ、GDP成長率は6.5%(2015年)、これは1965年の日本と近い数値。
そのため、今後もこのボリュームゾーンの所得もよくなっていくことが予想される。
数値だけみると、予算投下は頷ける。
また、1年ほどベトナムに生活していて、私自身もビールを飲む機会は多々あった。
というよりも、ビールしか飲まないといったほうが良いかもしれない。
「モッ、ハイ、バー、ヨーッ」(1,2,3よー)の掛け声とともに、屋台でプラスチックの机と椅子に腰をかけ、ひたすらにビールの乾杯を交わすのである。
実際にキリンがまとめた調査によると、ベトナムの2016年のビール消費量は9位。東南アジアでは最大になるとのこと。
数値だけではなく、文化的にもビール文化が根付いている傾向があるとも言える。
実際の反応はどうだったか?
文化的にも、今後の可能性のあるベトナム市場に、これだけ予算を投下するのは納得、
また、攻めのマーケティングも納得だったが、実際の反応はどうだったのだろう。
やはりまだフェス文化に慣れていない若者たちは、その場でノる(踊る)などということは少なかったが、当日はかなりの人だかりができていた。道路中に広がるバイクの波はさすがベトナム…という感じであった。(当日はBeer禁止だったが)
実はMartinよりもMy tamが登場した方が周りの熱気が強い気がしたが…
そのMy tamをチョイスしたのも、漏れずに若者を囲い切れてるという点では◯かもしれない。
最終的に思惑通り?、SNSにはHeinekenとF1のロゴがついたイベントの様子が、SNS上を彩られていたので、今回のイベント自体は成功に近づいているといえるではないだろうか。
ただ、ベトナムにはローカルのサベコ社の「Beer Saigon」や「333」、シンガポールの「Tiger」など、競合が多い。
(過去にサッポロもサベコ社の株購入を検討していたとか)
拡大する市場に積極的に仕掛けていく、各社の今後のマーケティング手法に注目したい。